まずパナマ文書を知る前に、パナマ共和国の特殊性を見てみましょう。
それを知ることにより、どうしてパナマ文書が作成されるに至ったのか?が見えてくると思います。
パナマ共和国は北アメリカ大陸の最南端にあり、コスタリカとコロンビアに挟まれた国で、国土は北海道より少し小さいくらいです。
年間貿易収支は、輸出額が約8億ドル、輸入額が130億ドルと極端な赤字で、この巨額赤字は恒常的となっており、国内の農林水産及び製造が非常に弱い事を指しています。
パナマ共和国の収入の大部分は、有名なパナマ運河の運営と、金融などの第三次産業で成り立っており、国内GDPの8割を占めています。
生産と言う見地からは、決して国土に恵まれないパナマですが、南北アメリカ大陸と、太平洋及び大西洋の結節点にあり、貿易と言う面においては非常に重要な位置にあります。
パナマのように、産業などが発達しない国が、国際社会で外貨を稼ぎ、生き残るためには産業に替わる魅力が無くてはなりません。
そんな中で外資を誘致するための魅力として、税金を安くしたり殆ど徴収しない…などの施策を取る国が出てきます。
世界的な大企業や富豪にとって、税金はいつも頭を悩ませる種ですから、それを安くしてくれる国があるのなら、こんな嬉しい事はないと言えます。
そして、税金を殆ど徴収しない国のうち、他国への情報開示をしない等、透明性に欠く国を『タックスヘイブン』と呼びます。
タックスヘイブンは、各国の正常な税金の徴収を阻害します。
例えば巨額の利益が出た日本法人が、タックスヘイブンに所在する会社へ、架空の仕事を発注し、経費をたくさん計上したとします。
すると、日本ではその分だけ利益が減少し、税金が安くなります。
一方で、タックスヘイブンでは多額の利益が計上されても、税金が課されることはありません。
結果、その会社は税金を支払わない結果となります。このように、本来は日本で徴収できていた筈の税金が、パナマへ流出してしまうことになります。
これは租税回避と呼ばれ、禁止されている取引の一つです。
ただ、ここで難しいのが、租税回避は法律には違反していないという点です。
法律は守っているが、意味を曲解、悪用して合法的に課税を免れる。
これを租税回避と言います。
また、その情報秘匿性から犯罪資金の温床となる可能性が非常に高くなります。
犯罪に絡んだお金が、タックスヘイブンを経由すると、そのお金の足取りが掴めなくなったりするからです。
タックスヘイブンでの情報開示が進めば、未然に防ぐことが出来る犯罪も多くなるかもしれません。
タックスヘイブンによる、各国への弊害は枚挙にいとまがありません。
パナマ共和国も、世界に数多くあるタックスヘイブンの一つ。
パナマ文書とは、まさにこのタックスヘイブン国で作成された書類でした。
しかし、パナマ文書と言う名前が付けられていますが、政府による公式資料と言う訳ではなく、パナマ共和国にて活動を行う法律事務所が作成した機密資料でした。
総数1,150万件、関連する企業、株主、取締役21万4千社にのぼり、その文書サイズ2.6テラバイト。
この膨大な量のデータが、ハッキングによって流出することとなりました。
今まで一切出てこなかったタックスヘイブンでの情報だけに、衝撃が走った訳です。
タックスヘイブンにおける世界的な富豪の不明瞭な取り引き。それが白日の下に晒された瞬間とも言えます。
情報秘匿を盾に、正当な課税を逃れる富豪たち。
そんな、モラルの欠如した人々の取引状況が、詳細に文書として記載されていました。
中には破綻した国の首相の名前も記載されており、多くの国民が苦しむ中、自分だけがさっさと資産を移動、隠蔽し逃れていました。
しかし、先にも書いた通り、世界にはたくさんのタックスヘイブン国があり、パナマでの取引は氷山の一角に過ぎません。
それの何倍、何十倍もの取り引きが世界で行われているかも知れません。
先進各国では、こうしたタックスヘイブンでの取り引きに目を光らせ、厳しく取り締まっていますが、いたちごっこになっているのが現状です。
一部の特権階級にある人たちだけが、情報と富を独占し、不当に逃げるタックスヘイブンは、やはり大きな問題であると言えます。
一般的に、タックスヘイブンや租税回避と言った用語が浸透していないニャ。
熱しやすくものすごく冷めやすい国民性とも言えるニャ。
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